ねぇ、ばぁば。また、お話きかせて。
またかい?本当にあのお話が好きだねぇ。
だって、好きな物は好きなんだもん…
うふふ、そうだね。じゃあ、お話を始めようかね。
そう、今でも忘れない…
ばぁばの大切な子ども、ハナのお話…。
ハナはいつも私を救ってくれた。
そりゃ、小さい時はよく熱をだして心配をさせるのが上手な女の子だったよ。でも、そんなハナと過ごす時間は、私をいつも元気にしてくれていたわ。
ハナが12歳の誕生日を迎える前日に突然、言い出したの…
花屋で働いていた私に、『カーネーションの種が欲しい。』って。
お金もなくて高価な物は買えないけれど、本当に誕生日プレゼントはそんな物で良いのかって、私はハナに伝えたわ。
それでも、ハナは種が良いって言ったの。
そして、12歳になった0時ちょうど…。
今でも忘れない…お庭に一緒に種を植えたの。
植える時に、『いっぱい花が咲きますように…。』って、ハナはお願いをしていたわ。
そして、これからもこんな小さな幸せが続くんだろうなって私は思いながら、布団に入り眠った…。
私は夢をみたの…
大好きで愛してやまない、ハナの夢。
そして、夢の中のハナが、私にこういったの。
『私は魔法使いなの…。ママと住む世界が違うの。』
そして、ママが産んだ子どもじゃないとも教えてくれた。
何を言っているのかわからないけど、必死に何かを伝えたいとするハナの話を私は聞いたわ。
『ハナは生まれた時から1人の魔法使いだったの…。小さな子どもの時は、自分では生きていけない…だから、育ててもらう人間(ヒト)を決めて、魔法で記憶を変えたの。』
『でね…12歳を迎えると1人前の魔法使いになって、色んな魔法が使えるようになるの…。』
ハナがとても悲しそうな顔をするから、私は涙が出そうになったわ。でも、聞かなければいけないと思ったの。だから、私はそっとハナの手を握ったわ。
『ハナはどんな魔法が使えるの?』
『…今は1つしか使えない。…ママの記憶を消す魔法だけ。』
正直、頭が真っ白になったわ。
この子が私の中からいなくなる。
でも、私が止めると、この子の進む道も途絶えてしまう…
だから、笑顔を作ったの…。
そう、笑顔しか作れなかった…。
そして、自分の気持ちを整理するようにハナをギュっと抱きしめてこう言ったの。
『辛かったね…。でも、ありがとう…ちゃんと、お別れを言ってくれて。』って
ハナは私に伝えなくても、記憶を消す事も出来たはず…。
でも、あの子はあの子なりに考えて、私にお礼を伝えてくれたの。
だから、母親として私はハナにこう言ったの。
『楽しみとか、悲しみとか、辛さとか、幸せとか、いっぱい、いっぱいありがとう…。ハナ、いってらっしゃい。』
『ママ…、いってきます。』
次の日、私は目を覚ました。
いつも通り、仕事に行く準備をして、
いつも通りの時間に家を出た。
でも、忘れものがあったかのように、
家の庭に向かったの…
そして、私はたくさんの涙を流した。
何かを伝えるように、
私に向かって花がたくさん咲いていた。
真っ白でキレイなカーネーションが…。
ハナちゃんが魔法で花を咲かせたのかな?
うふふ、どうだろうね…白いカーネーションの「はなことば」はね…
[第6話]