物語

臆病な足音

これは悪い事をしてきた、男のお話。

その男は自分勝手で、いつも村のみんなを困らしていました。

そして、ついに捕まり裁きを受けました。

男は罪を償うため、心改めて生きる事を決意しました。

真面目に働き、困っている人々を助け、少しでも自分を求める人がいれば、手を差し伸べました。

いつの間にか、男は心優しい人間として周りから見られるようになりました。

男がいつものように仕事から帰ると、家に張り紙が貼ってありました。

『この村から出て行け、ワルモノは出て行け。』と書いてありました。

男は、ギュッと胸を締め付けられました。

誰かが自分の悪事を許していない。

誰かにずっと見られている。

そう思うと、怖くなり、男から笑顔がなくなりました。

それから、男は笑えなくなりました。仕事にも行かず、人と会わないようになり、家から出ないようになりました。

静かな時間が不思議と、男を臆病にしました。

物音や足音が聞こえると、誰かがまた張り紙をしにきていると思い、布団から出れなくなりました。

来る日も来る日も怯えて、食べる意欲すらなくなり、ついに男は布団の中で、1人、死んでしまいました。

男が目を開けると、死んだ自分の前に立っていました。

すると『コンッ、コンッ。』とノックする音がなり、ドアの前には死神が立っていました。

あぁ、、、私は本当に死んでしまったのか。

男に死神が手を差し伸べました。

男は死んでもドアから出るのを怖がりました。

しかし、死神が男の腕をひっぱり外の壁を見せました。

恐る恐る目を開けた男の前には、張り紙をとる少女の姿がありました。

男は、確かに覚えていました。

昔、助けた少女だとすぐにわかりました。

男はギュッと胸を締め付けられました。

怖さを感じた時と違う胸の締め付け方でした。

自分が恐れた音の中には、少女がいたのです。

自分を信じてくれている、少女がいたのです。

男は少女を見ながら静かに微笑み、死神と歩きだしました。

[第4話]