これは悪い事をしてきた、男のお話。
その男は自分勝手で、いつも村のみんなを困らしていました。
周りがどんなに優しく声をかけてくれても、人が信じられず、自分だけが幸せだったらいいと思っていました。
ですが、男も人間。
病気で倒れてしまい、今にも死にそうになっていました。
もうすぐ死んでしまう事に怖がりながら寝ていると、ふと誰かが声をかけてきました。
『おい、男。命を助けてやるから、隣の国まで走ってくれないか。薬もそこにある。そうだ簡単な事だ、必要なものもただでやるぞ。』
声をかけてきた男は自分とそっくり。
なんでも、隣の国の王様なんだとか。
王様は、男に水と服、そして懐中時計を渡し、去っていきました。
男は薬を手に入れるため、隣の国へ向かいました。
すると、いつも声をかけてくれていた少年に会いました。
少年は何かを探しており、男は声をかけました。
『何を探しているんだ?』
『病気の母を助けるために用意した薬をなくしてしまったのです。』
男は考え、また話をしました。
『おい、隣の国までどれくらいかかる?』
『そうですね、あなたの脚であれば夕方には着くと思います。』
『じゃあ、この時計をお前にやる。これはきっと高価な物だから、売って薬を買ってやれ。』
『本当ですか、ありがとうございます!』
男は王様にもらった、懐中時計を少年に渡しました。
男が歩き続けると、旅人が倒れていました。
男は考え、また話かけました。
『おい、どうした?』
『飲まず食わずで旅を続けて、喉が渇いて今にも死にそうなのです。』
すると、男は旅人に水を渡しました。
『本当ですか、なんて優しい方なのでしょうか、、、ありがとうございます。』
そして、男はまた歩きだしました。
隣の国の城が見える所で、ボロボロな服を着た少女に会いました。
男は通りすぎようとしましたが、また考え、声をかける前に自分が着ていた服を少女にそっとかけてあげました。
男が、城に着くと兵士が声をかけてきました。
『王様だ!王様を見つけたぞ!』
やっと薬が飲めると安心した男を兵士は襲いかかり、男は殺されてしまいました。
そう、男とそっくりだった王様は命を狙われていたのです。
自分が死ぬとわかった男は、心の中でこう思いました。
自分勝手な自分が、多くの人を傷つけた罰だ。でも、最後に少しでも誰かの役に立つ事ができた…と。
これが、男が見た最後の夢。
男がベッドで1人で死んだ事は誰も知りません。最後までわがままに生きた男は、いつまでも1人だったのです。
[第3話]