物語

リラと魔法のボロ傘

これは、雨が降る魔法のボロ傘をさしたリラと、リラと出会ったもの達との不思議なお話。

草木も生えない荒れた場所に、リラは傘をさしていたんだ。

リラの傘はボロボロで、雨の日には、何の役にも立たないんだ。しかも、晴れた日なのに傘の中でずっと雨が降っている不思議な傘なんだ。

雨が降っているなら、リラはびしょびしょだって?心配してくれて、ありがとう。でも、大丈夫だよ。カッパを着ているからね。

リラは晴れた良い天気に、今日も不思議な傘をさして歩いていく。あれあれ、リラが通ったあとをよく見ると、不思議な事が起きているよ。何かな?

グングン、グングン伸びてくる。赤、青、黄色、白い花まで、ニコッとその顔を見せてくれている。パッと開いた花たちは何だかどこか楽しそう。

リラが歩いていると、矢が刺さった鳥さんを見つけたよ。リラはそっと傘をさしだすと、あらあら不思議。矢はとけ、真っ黒だった鳥さんは、真っ白な鳥さんになり、羽ばたいたよ。

リラと白い鳥さんが歩いていると、痩せ細った犬さんを見つけたよ。リラがそっと傘をさしだすと、あらあら不思議。真っ黒だった犬さんは、真っ白い犬さんになり、ワンッと大きな声をだしたよ。

リラと白い鳥さんと白い犬さんが歩いていると、怪我をして眠っている人を見つけたよ。

白い鳥さんがつついても、白い犬さんが吠えても起きないその人に、そっとリラが傘をさしだすと、あらあら不思議。生き物をあやめる危ないものは全てとけ、傷も治ってしまったよ。

リラたちが去ったあと、その人はむくっと起きて走り出したんだって。そんなにあわてて、どこにいくのかな。

草木も生えない荒れた場所で、花たちの咲く道ができていたんだ。とても美しいこの道を止まる事なく走り続けて、いったいどこに向かっているんだろう。

やっと、到着…。その人の帰りを待っていた家族がいたんだ。みんなでエンエン泣きながら、抱きしめ合ってなんだか幸せそう。

いつか不思議に出来た花の道があれば、どこまで続くか歩いてみてよ。きっと、リラたちが君に会えるのを楽しみに待っているはずだからさ。