[たかてる] 先生、さよなら!
[たけだ先生] はい、さようなら!車に気をつけるんだぞ!
[たかてる] あれ、あゆむやん!白い袋持ってどこいくん?
[あゆむ] たかてるくん!おばあちゃんのおつかいで、地蔵のおっちゃんにおはぎ持っていくところ!
[たかてる] 何それ?お地蔵様にお供え?どこにあるん?
[あゆむ] 小学校の門を曲がった所!
[たかてる] 近くにお地蔵様なんかあったかな…ってか、おつかいとか偉いなぁ!おかんに言われても、絶対行かへんわ。
[あゆむ] ただでそんなん行くわけないよ。お供えしたらたこ焼き貰えるんよ!
[たかてる] ホンマに!?俺も行ってみよかな!
[あゆむ] いいよ、一緒に食べよ!
あゆむと昨日のテレビアニメの話をしながら、小学校沿いを歩いていたら、ホンマにあった。大人2人が入れるぐらいの小さなプレハブ。そこにお地蔵様の姿はなく、ただのおっちゃんがやってるたこ焼き屋があった。
[あゆむ] おっちゃん、はいこれ!おばあちゃんから!
[地蔵のおっちゃん] おお、あゆむ!いつもありがとうな、きぬえさんのおはぎは最高や!ちょっと待っとり、すぐにたこ焼き焼くさかいにな!
[たかてる] おい、あゆむ…お地蔵様はどこにあんの?
[あゆむ] この人が、地蔵のおっちゃん!
[たかてる] ちょ、待って。普通のおっちゃんやん!
[地蔵のおっちゃん] 何や聞き捨てならんなぁ、たかてる。おっちゃんが正真正銘のあおば町を守っとる地蔵や!
[たかてる] 嘘や!お地蔵様いうたら、石でできた置きものやろ!?
[あゆむ] うん、ボクも初めは驚いた。おっちゃん、何でお地蔵様になったか、あの話をしてあげて!
[地蔵のおっちゃん] しゃあないなぁ…何も知らへん、たかてるのためにたこ焼きが焼けるまで、おっちゃんの昔話をしたろ。そう、それは、おっちゃんがまだ若い時の事や…。
おっちゃん、生まれた時から1人でな。親の顔も見た事あらへんかった。生まれたからには、何とか生きなおもて、そりゃ必死のパッチやったで。あおば町言うたら、そら自然豊かで今みたいにコンクリの建物なんかなかったんや。そんな中、おっちゃんのうち言うたら山の一角を掘って作ったお地蔵様の祠やった。
最初はよかってんけどな、何でも焼いたら食えるおもてたおっちゃんも、あかんモノ食べてもたんや。ほなら、ごっつう腹痛なって「あぁ~死ぬわ、これ」おもた。
ほならな、お地蔵様が急にピカーってごっつう光ってな、おっちゃんにこう言うた。「自分、うちで働かん?」ってな。もう、死にかけとったんやけど何をおもたかおっちゃん、「履歴書持ってないです。」って真面目に答えた。
ほな、お地蔵様が「うちはやる気あれば、ちゃんと最後まで面倒みるよ。」って言われてもて。この人、慈悲深いわ、やっぱお地蔵様やな…おもておっちゃん「ほな、頑張ります。」の即答やった。そしたら、腹痛がピタッと止まってな、この店の中におったんよ。
[たかてる] あゆむ、このおっちゃん危ない人や。
[あゆむ] まぁ、最後まで聞いてみて!
[地蔵のおっちゃん] ホンマやねんって、たかてる!ほな、続き話するで。
おっちゃんにとったら、この店は快適にやった。雨風しのげるし、衣食住困らんようなった。でもな、お地蔵様からこんな事言われたんよ。
「昔々、お地蔵様はあちらこちらにありました。医学も進んでいない時代、流行り病が早く終息しますように、未来ある子ども達がこれからも元気でありますようにって、人々は手を合わせて願ってくれました。でも、時代は進み、願わなくても苦悩のない生活が出来るようになりました。そうなれば、地蔵は必要なくなり、あちこちで祠はなくなりました。でも、私は子ども達をこれからも見守ってあげたい。その代わりをあなたにお願いしたいのです。」って。
おっちゃんそれ聞いた時めちゃくちゃ感動してな。何でか言うたら、こんなおっちゃんでも必要としてくれる方がおったかぁ~、それに人さんの為にええ事できるんは最高やなっておもたんよ。
[地蔵のおっちゃん] ほんでな、お地蔵様いうたらお供えで生きてたやんか!おっちゃんは生きた人間やろ?地蔵になったからいうても、生きる為のお金は自分で何とかせなあかんかった。何が出来るかなおもて、ふとな、いつかたこ焼き腹一杯食べたい夢を思い出して、このたこ焼き屋を始めたってちゅう話や!
[たかてる] なんかうさんくさいなぁ!あと、絵が下手すぎや!
[地蔵のおっちゃん] 何やおっちゃんの力作やで!まぁせやかて、ホンマの話や、ほれたこ焼き焼けたぞ!今日は特別におっちゃんの話聞いてくれたから、2人分や!
[あゆむ] ありがとうございます!帰ろっか、たかてるくん!
[たかてる] おう、帰ろか。たこ焼きありがとぉ。
[地蔵のおっちゃん] あゆむ、たかてる、いつでもおいでや!おっちゃん、いつもここにおるからな!何でも話しにおいで、何でも聞いたるからな!!
信じられない話を聞いて、まだ「変な人」と疑いつつ、たかてるとあゆむは歩きだした。この日、帰り道にある公園のベンチで食べたたこ焼きは最高やった。最後の一個を食べようとした時、たかてるはふと、思った。
[たかてる] あゆむ…。地蔵のおっちゃんに俺の事…話したことある?
[あゆむ] ううん、今日が初めて。
[たかてる] 地蔵のおっちゃん、俺何も言うてへんのに「たかてる」って名前知っとった…。
[あゆむ] あっ!!!?
[たかてる] もう!!何、もう!!急に大きい声だしたら、びっくりするやんか!!
[あゆむ] おばあちゃんに、おっちゃんに伝えるようにって言われてた事忘れてた…。
[たかてる] 何を伝えるつもりやったん。
[あゆむ] 「今も怖い病気が流行ってますが、あおば町の子どもたちはいつも通り元気に過ごせてます。これもお地蔵様のおかげです。いつも見守って下さりありがとうございます。」って…。
[たかてる] ・・・今度おかんに言うて、お手伝いするからお供えこうて言うわ。ほんで…また一緒に地蔵のおっちゃんとこ行って伝えよや。
[あゆむ] うん‼︎また、たこ焼き食べたいしね‼︎
[たかてる] ってか、地蔵のおっちゃんの若い時の話っていつの話なん?ってか、おっちゃん何歳なん!?
[あゆむ] たかてるくん、細かい事は気にせんとき!
[たかてる] なんで急に関西弁?
[あゆむ] たかてるくんのマネ!いつも面白い話し方やからマネした!
[たかてる] いじるな、ばかタレ!
2人はいつもよりもたくさん笑い、帰るのでした。
[第13話]