物語

墓守りクロール …2

誰が見ても墓守りだと分かる姿。

誰もが嫌がる仕事を進んで行うクロールに、ねぎらいの言葉は聞かれない。

あそこでコソコソ、こちらでヒソヒソと…。

「必要とされていない者」と、今もまた評価されている。

相手の気持ちを考える余裕すら、この町にはないのだろう…と、自分が納得する言葉を自分に投げかけながらクロールは歩く。

『悪口いうなら、はっきり言いなさいよ!あれ?あぁ…私見えないんだった。クロールさんはあんな態度をとられて腹立たないの?』

『はい、もう慣れっこですから。』

クロールは嘘をついた。

『嘘!クロールさん、笑ってないじゃない。看護師やってたから分かるのよ、そういう無理してる人!』

クロールは少し驚き、笑いながら話した。

『リリーさんはすごいですね。看護師さんとして、多くの人たちをそうやって元気づけてきたんですね。』

『そうよ。だから、このリリーお姉さんに何でも言いなさい!分かった?クロールさん!』

クロールは気づいていなかったが、リリーもまた嘘をついた。

無理に宿舎へ誘った理由が、1人で確認するのが、ただ怖かっただけ。

「部屋の中は?」

「自分が死んで周りの様子は?」

「もし、想像と違ったら?」

少しでも自分が傷つかないための保険にクロールを誘った事がバレれないよう、笑顔を作り続けていた。

だが、リリー・マーガレットが住んでいたホズミック・クリニックの宿舎に着いた時、笑顔の奥にひきつく表情を見たクロールは、無理に会話をしていた事に今更ながら気づくのであった。

『どうします?ボクが見てきましょうか?』

『ううん…。私がみてくる。私なら壁をすり抜けれるからね…!』

『分かりました。では、ここで待ってますから、出来るだけ早くお願いしますね!』

リリーの気持ちも分かってあげたいが、正直クロールは早く帰りたかった…。

だって、また指さされているんだもん。

町へ来た時は、ネズミの様に誰とも会わず、コソコソと道を選んで歩いていたのに…今日は、堂々と人ごみの中を歩いてきた。

そして、今もここに立っている自分を想像しただけで胃が痛かった。

1人で待つ数分が、とても長く感じたのは言うまでもなかった。

そんな事も知らずにリリーは玄関ドアからすり抜けて出てきた。

『どうでした?何かわかりましたか?』

『…なにもなかった。私の物、全て無くなっていたわ。それにもう新しい人が住んでいて…。ねぇ、クロールさん…今日って何月何日?』

『今日は、12月4日です。』

『それって、私が死んでから2ヶ月以上過ぎているって事よね…。』

クロールは、悩むリリーに1つ提案をした。

『リリーさん。日が暮れて外はもう暗くなってきましたので、今日は墓地に帰りませんか?あの、、その、ボク…そろそろ限界なので…。あと、良い案を思いつきましたので、その人に頼みましょう!』

リリーは小さく頷き、そして、いつも以上に早歩きで帰るクロールの後ろを静かについていくのであった。

墓地につき、クロールはすぐ彼女を紹介した。

『リリーさん、この方はヴェルガベッド・ベルさんです。』

『初めまして…って、女性の服を着ている様に見えますけど、この方は男性の方よね?』

『クロールちゃん、何、この小娘は!私は、男じゃないわ、両生類よ!!』

オカマのベルの登場であった。

[第9話-2]