物語

つれづれなるまま

幼き日に聞いた事

どれもこれも全てが本物で

偽りなど一切なかった

好む言葉も

嫌う言葉も

何もかもを受け止めて

過ごす日々を疑わなかった

違和感そのままだと

すぐに濃霧の中に入り

迷わぬようにと

怖さを隠す笑顔を作り

手を繋ぎひと時の安堵を

離さない

感じた体温

吸き吐く音

身の匂いが

確かな眠りの約束

今となっては

情けない話

でも幸せと感じ

また失う怖さが

眠る瞬間を逃し

深々と沈ませる

落ちゆく事を

否定せず

今更何を思うと

出ない答えに

遊ばれる

その日

欲した願いと

聞き避けたい事を

振り払うこともできず

蝕むモノを咀嚼する

刻々と過ぎゆく時のしがらみは

心は幼子のまま

ただ大人にする

幾度と繰り返される

悪夢の映像と声から逃れられず

その終わらない映画は

思考を止める事を許さない

苦しむ理由を周りに置き換えて

安らぎという名の依存を手に

歩を進める

未知なる先のその先を

耀き届かなぬ深淵から

眺める眼に埋み火が

変わるこの時

縋る者が救われる

価値など元より存在せず

それは依代だったと

無常を語り、今生を灯す。

[第14話]